100km歩くウルトラウォーキング

32時間歩けますか?地獄の富士山一周ウルトラウォーキングに参加した話 その1


制限時間は32時間!過酷なウォーキングレースに挑め

2019年、4月27日。わたしは「富士山一周ウルトラウォーキング」というイベントに参加しました。
これは「富士山の周り125kmを、歩いてぐるっと一周する」という過酷なレース。制限時間はなんと32時間です。

わたしは去年「霞ヶ浦ウルトラウォーキング」という、総距離104kmのレースにゴールした実績があります。
104km歩けた自分なら、125kmのレースだってきっと踏破できるはず。
しかし、このレースはそんなに甘くないことを、わたしは身をもって知ることになります。

レース会場へ向かう

レース当日の朝。
富士宮市のゲストハウスに宿泊したわたしは、レース会場である「富士山本宮浅間大社」に向かいます。
せっかくなので浅間大社にお参りして、レースの無事をお祈りしましょう。

「おっ、もう結構集まってるな」
受付にはすでにレース参加者たちの姿がありました。
ウルトラウォーキングは「完走率60%」と言われるほどの過酷なレース。
そのため、会場にはどこかピリピリした雰囲気が漂っており、身を引き締めてくれます。

今回のレース参加者は237人。果たして、この内の何人がゴールできるのでしょうか……

レーススタート!

参加者の受付が終わり、開催者の挨拶が済むと、いよいよレーススタートです。
「それでは第三回、富士山一周ウルトラウォーキングスタート!」
ゼッケンナンバーが低い人達から、順にスタートしました。

レースのスタート前、わたしはとある男性に。
「それじゃ、お互いにがんばりましょう!」と挨拶しました。
彼は同じゲストハウスに泊まっていた人で、彼もウルトラウォーキングに参加すると知り、意気投合したのです。

午前9時10分。わたしのグループがスタートします。

・富士山浅間大社~1srエイド(9:10・0km)

浅間大社を出た一行は、1stエイドの「白糸の滝」を目指して歩きます。
道はゆるやかな上り坂。
周りの人が速いのか、何人もの人が自分を追い抜いていくけれど、ウルトラウォーキングはマイペースで歩くことが肝心。
あせらずゆっくり進みます。

過酷さ倍増!雨に見舞われる

歩き始めて30分後。空からパラパラと雨が降りはじめました。
うーん、雨かぁ……
体力の温存が第一の耐久レースで、いきなりの雨。今回のレースは波乱の幕開けとなりそうです。
雨が降ると、座って休むこともできないし、地図やスマホが使えないし、いろいろ不便なんだよなぁ。

午前11時30分、1stエイドの「白糸の滝公園」に到着。

靴が濡れてしまったので、靴下を脱ぐと足をよく拭きました。
足を濡らしたまま歩くと、ふやけてマメができる恐れがあるのです。

空は完全に煙っていて、その気になれば1日中降りそうな気配。
雨宿りしても仕方がないので、トイレを済ませるとすぐに出発します。

1stエイド~休憩場所(11:30・11km)

白糸の滝公園を出てしばらく歩くと山道に入りました。
人気がない道をひたすら進みます。
富士山ウルトラウォーキングは
「富士山を見ながら歩ける」のがウリなのに、この天気ではなにも見えません。

雨は止むどころか激しさを増し、全身濡れねずみ状態。もう靴がびしょびしょだよ……
顔にベタベタとまとわりつく雨がうっとうしくて、正直、叫びたくなるような気持ちでした。
まいったな、まだ歩き始めて3時間なのに、心がめげかけている……

また、歩いている道も上り坂が多くて、足への負荷も高めです。
前回参加した「霞ヶ浦」のレースは開催地が湖だったけど、今回はまるっきり山道。
レースに向けて平地トレーニングしかしてこなかったことを、軽く後悔しました。

午後2時、休憩場所の「ファミリーマート富士見朝霧店」に到着。
休憩したくても雨はどしゃ降りで、腰を下ろすことすらできません。

休憩場所~2ndエイド(14:00・23km)

顔を叩いて気合を入れると、土砂降りの道へと歩き出しました。

スタート前に運営の人が
「天気予報では夕方には晴れるそうです。富士山がきっと見えますよ!」
と言っていたけれど、本当かな……。

午後3時、山梨県の「富士河口湖町」に突入。

ついに雨が止む

そして午後3時30分、ようやく雨が上がりました。
ああ。雲の割れ目から、青空が見えたときの嬉しさといったら!

ふと脇を見ると、日差しを浴びてキラキラと輝く本栖湖の景色が。
雨にも負けずに歩き続けたかいがあったなと、嬉しい気持ちになりました。

午後4時20分、2ndエイドの本栖湖駐車場に到着。
エイドでは豚汁が振る舞われていました。冷えた体に、温かい豚汁はとてもありがたい!
思わずおかわりするおいしさでした。

濡れた靴下を取り替えて、しっかり休憩を取ると、次のエイドに向けて出発。

ふと、目の前に巨大な山がそびえ立っているのが見えました。
あの堂々たる風格。さすがは富士山です。

2ndエイド~3rdエイド(16:20・35km)

日が沈みかけた道をひたすら歩きます。
それにしても恐ろしいのが、
「スタートしてから7時間以上、ずっと上り坂を歩いている」

ということ。

上り坂は平地よりも負荷が高いし、息も上がります。
カーブを曲がると次の上り坂が待っていて、またカーブを曲がると次の上り坂が待っている……
この「上り坂が終わらない」ことも、精神的に辛い。

そして、やっと気づいたのです。
「富士山一周ウルトラウォーキングは、中・上級者向けのレースだ」と。
レースの参加を考えている人がいたら、この圧倒的な上り坂への対策を練るといいかもしれません。

この時から、精神的にも肉体的にも疲れ始めており、
・歌を全力で歌って元気を出す
・ひとりごとで自分を励ましまくる
・面白かった芸人のコントを一人で再現する
などの奇妙な振る舞いを取るように。それぐらい気持ちが辛かったのです。

午後6時30分、3rdエイドの富岳風穴駐車場に到着。(スマホ充電中のため写真はなし)
この頃には日が沈みかけており、気温は3℃まで下がっていました。

3rdエイド~4thエイド(18:30・43km)

日没後の道を歩きます。
「もう、一体いつになったら上り坂が終わるんだ!」
まるで無限ループのように続く上り坂に、心がボッキリと折れてしまいそうでした。
足はふくらはぎの筋肉がパンパンで、まるで風船みたいに膨らんでいます。

この時は体力も尽きかけで、
「もう歩けない→底力が発動して元気になる→やっぱりもう歩けない」
という状態の繰り返しでした。

午後8時30分、4thエイドの「ファミリーマート河口湖フォレストモール前店」に到着。
この時点で歩行距離は52km。まだ、全行程の半分も歩けていない……
「レースを完走する」という目標に、黄色信号が灯った瞬間です。

エイドではカレーうどんが振る舞われていました。
疲れているけど食欲はあるので、たっぷり食べます。

4thエイド~5thエイド(20:30・52km)

富士急ハイランドのそばを通行。

この時点で、足腰はボロボロでした。
足は一歩歩くだけでズキズキ。まるで、裸足で石を踏んづけたような痛さです。
腰は針金を通したみたいに固くなっていて、ほんの少しも曲げられません。

腰が痛くなると、座って休憩することもできなくなってしまいます。
なぜなら座る時に腰を曲げると、思わず声が出るほど痛いから。
かといって、このまま歩き続けるのも辛い……。

トレッキングポールをつきながら、ほとんどおじいさんのような速度で歩きました。

午前0時。5thエイドの「山中湖畔駐車場」に到着。
エイドではお汁粉が振る舞われます。甘くて温かくて、疲れた体に沁みます。

「すみません、リタイアでお願いします」
休憩していると、女性二人組が、スタッフにリタイアを告げていました。

リタイアか……
この時、わたしの脳裏には鮮明にリタイアの文字が浮かんでいました。

その2


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