100kmウォーク

24時間歩けますか?地獄の「ウルトラフリーウォーキング」に参加してみた (その2)


24時間歩けますか?地獄の「ウルトラフリーウォーキング」に参加してみた (その1)から

5thエイド~6thエイド(20:40・51km・10時間40分)

ほぼヘッドライトの灯りしか見えない道を歩きます。

一人で歩くのは心細いので、あるカップルの後ろをついて歩きました。
まるでストーカーみたいだけれど、ペースメーカーの効果があるので、
誰かの後ろを歩くのはおすすめです。
……と思っていたら、1時間ほどで置いていかれてしまいました。

この時は腰の痛みも限界で、ちょっと道につまづいたり、リュックを背負い直すだけで、
腰にビキビキッと電流が走るような状態。思わず「うっ!」と情けない声が出ます。

気温は0℃。寒さでジリジリと体力が奪われていきます。

リタイアする気は全くないつもり。だけど、「もし、今リタイアして家で休めたら、どんなに楽だろうな」
と一瞬考えてしまう程度には疲れていました。

0時30分、6thエイド「ファミリーマート小美玉下馬場店」に到着。
エイドでは温かい飲み物が振る舞われていました。

シートに座って休憩していると、こんな話が聞こえてきました。

「一番速い人は、19時に6thエイドを通過したんだって」
「嘘でしょ? 9時間で51kmも歩いたのかよ」

6thエイド~休憩所(0:30・65km・12時間40分)

かなり辛い時間帯でした。疲労&不眠のダブルパンチで、意識が朦朧とした状態。
どんな気分かというと、「徹夜で勉強したあとに、フルマラソンさせられている」ような気分。

それに加えて、夜道を歩く怖さも追加されました。
街灯もない田舎道を深夜に歩くと、これが結構怖いのです。

これから書くことは、すべて疲れによる幻聴ですが、
カエルのグェグェという鳴き声が老婆の笑い声に聞こえたり、
周りに誰もいないのに、くぐもった話し声が聞こえてきたり。
一番怖かったのは、「自分の後ろで足音がするので、振り返ってみたけど誰もいない」ということが何度かあったこと。

ビクビクと歩きながら、朝が来るのを祈りました。
朝が来る頃にはゴールも大分近づいているし、気分だって上がるはず。
だからとにかく、この夜を乗り切りたい。

2時10分、休憩所「ファミリーマート石岡高浜店」に到着。
ここだけ補給はなく、コンビニで自由に休憩します。

こちらは眠気と疲れが限界の写真。見事に目が死んでいます。

休憩所~7thエイド(12:30・71km・14時間30分)

次のエイドは18km先。
「体力はもうとっくに限界」「次のエイドまで4時間半」「一番眠い時間帯」という、一番辛い時間帯でした。

辛い時は
・好きな人の名前を叫ぶ
・好きな歌を叫ぶ
・帰ったらやりたいことを叫ぶ

の3つの叫びで、気持ちを奮い立たせました。

眠りながら歩く

この時はあまりに眠くて、眠りながら歩く技を身につけていました。
目を閉じて、わざとフガーフガーといびきの音を立てて歩くことで、眠っている気分を味わいます。
ダメだあんまり効果がないな……

また平らな道を歩く時は、両目をつぶって歩いてみました。
転びそうになったのでやめました。

待望の夜明け

5時10分。夜が明け始めました。

そして6時。ついに朝日が昇りました。

朝日を見た感想は一言。
「つらい!」

徹夜明けの自分にとって、朝日はあまりにも眩しすぎました。
体内時計のリズムが狂って、ぐわーっと眠気を感じます。

眠気が限界なので、道端で体育座りをすると仮眠。
ダメだ、寒くて寝られない……

もし、ここで神様が目の前に現れて、
「きみは頑張ったから、特別にここをゴールにしてあげるよ。
みんなには『ちゃんと最後までゴールしたよ』って言っておくからね」
と言ったりしたら、迷わずその提案に乗ったことでしょう。

伝説のおじさん

ふと、自分の前を一人のおじさんが歩いていきました。

 

彼の足元を見て驚愕。彼はサンダルを履いていたのです。
そんなバカな……サンダルでコンクリを100kmも歩いたら、足がボロボロになるぞ……!?

世の中には、自分の想像を超える人間が山ほどいると実感します。
※あとで聞いた話、彼は「サンダルさん」という謎の人物で、
全国のレースで目撃されているのだそう。

7時35分、7thエイド「セブンイレブン出島西成井店」に到着。歩行距離は89km。
残りは15km。ここまで来れば、リタイアという発想はありえません。

とにかく焦らず、安全にゴールすることだけを考えます。

7thエイド~8thエイド(7:35・89km・19時間35分)

ついにスタート地点の町である、土浦市に戻ってきました。

ここでついに、恐れていた事態が発生。
右ヒザにピシッと痛みが走ると、あまりの痛さにヒザが曲がらない状態に。
今までの無茶が、ついに限界をむかえたようです。
痛みが収まらないので、右足をピンと伸ばしたままひょこひょこ歩く、
チャップリンみたいな歩き方で進みます。

10時20分
8thエイド「ファミリーマート土浦おおつ野店」に到着。

エイドでは札幌味噌ラーメンが振る舞われました。
くたくたに煮込まれた味噌ラーメンが、涙が出るほどおいしく感じられます。

8thエイドを出たら、ゴールまであと7km。体力は限界ですが、気力は100%あります。

8thエイド~ゴール(10:20・97km・24:20)

何度目かわかりませんが、もう体力は限界でした。
ここでトドメとばかりに、左足にマメができました。
(靴下を登山靴下から、タダの靴下に替えたのがいけなかった)
一歩前に踏み出すたび、針を踏んだような痛みが走ります。

仕方がないので、両足を引きずって歩くことに。もはやおじいさんのようなヨロヨロ歩きです。

レースのゴールは、スーパー銭湯「湯楽の里」という施設。
市街地に入ったので、銭湯が近くにありそうな気配を感じます。

ゴールは突然に

最後のエイドを出発してどれくらい経ったでしょう。
とある陸橋を渡ると、向こうに「ゆ」という看板が見えました。ゆ?

ああ。看板に「湯楽の里」と書かれているとわかった時の嬉しさといったら!

「着いた!」

丸2日歩いて、ゴールが見えた時の喜び。それはもう言葉には言い表せないほどです。
両腕をあげてバンザイしたり、奇声をあげたり、
何度もガッツポーズしたりと、もう「おかしい人」の挙動です。

走りたくなる気持ちをぐっとこらえると、吸い寄せられるようにゴールに到着。

ゴール・スーパー銭湯「湯楽の里」(11:43・104km・25時間45分)

ゴールに着くと、スタッフの人から「完歩証明書」をもらいました。

うーん、これは結構嬉しいかも。
そこらの賞状よりも、ずっと誇らしい気持ちがします。

タイムは25時間43分。第一目標の「26時間以内にゴールする」を達成できました。
「ぼくの順位ってどれくらいですか?」
「そうですね、途中リタイアした人もいるので完璧にはわかりませんが、70位くらいですかね」
ゴールさえ難しいレースで、119人中70位。上々でしょう。

歩いた軌跡はこちら
https://goo.gl/maps/vExTMVKTW1w

至福のお風呂タイム

完歩証を受け取ったら、その場で解散です。
身も心も削りきった状態で、行くべき場所はどこか? もちろん目の前のお風呂です。
浴場に入ると、体を洗うのもそこそこに、まっさきに露天風呂へ。

お風呂に入った瞬間、体中が泡になってじゅわーっと溶けていくような、とろける気分に。
頑張って良かった、生まれて来てよかったとしみじみ感じました。

お風呂から上がると、「たこ焼き・たこの唐揚げ・コーラ」で乾杯。しみます。

家に帰るのはかなり困難でした。足の筋肉が固まってしまって、
歩けない・階段を登れない・降りれないの三重苦。

それでもなんとか帰宅すると、早めに就寝。

次の日は、血も涙もない月曜日。明日会社行けるかな……

まるで「死のロングウォーク」のようだった

レース中はずっと、スティーブン・キングの「死のロングウォーク」という小説のことを考えていました。
「死のロングウォーク」は一言でいうと
「アメリカの少年たちが100人集まり、歩けなくなったものから殺される。最後まで生き残った者が勝者」
というお話。少年たちが次々と疲弊して死んでいく光景は、まるでウルトラウォーキングと同じ……?

レースを終えて

想像を超える辛さでしたが、感想は「やってよかった」です。
ツアーをゴールできたところで、お金がもらえるわけじゃないし、
有名になれるわけでもないし、モテるわけでもありません。(むしろ引かれた)

それでも、なにか一つのことにチャレンジして、それをやりきるということは、
良い思い出になるし、自信にもなります。

最近、初対面の人に「この前ウルトラウォーキングというイベントで、2日で26時間歩いたんですよ」
というと、「えっ!?」とびっくりされます。

自分はアクティブな人や、すごい経歴を持つ人に憧れているのですが、
そういう人に少しでも近づけたのでしょうか。

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