コラム・エッセイ

路上生活者の命を支える。池袋の炊き出しボランティアに参加した話


凍えるほど寒い日に、炊き出しのボランティアに参加した話

東京で初雪が観測された、凍えるほど寒い日。
わたしは「特定非営利活動法人 TENOHASI」が開催する
炊き出しのボランティアに参加しました。

炊き出しに参加した理由は?

わたしが炊き出しに参加した理由は、オーバーワークで体を壊してしまったのがきっかけです。
会社を休んでいる間、急に「誰かのためになにかをしたい!」という気持ちが湧いてきて、
衝動的に炊き出しに応募していました。

特定非営利活動法人 TENOHASIとは?

特定非営利活動法人 TENOHASIは、ホームレス(路上生活者)の人たちに支援を行っている
ボランティアグループ。
活動はホームレスへの炊き出し、夜回り、シェルターの運営などがあります。

文京区のある施設で調理ヘルプ

炊き出しのボランティアは、食事を作る「調理」と、食事を配る「配食」の二部に分かれています。
まずは調理作業に参加するため、文京区のとある施設に行きました。
(その施設は、プライベート上の理由で非公開となっております)

施設に集合すると、まずは参加者同士で挨拶します。
そこにいたのは主婦の人たちをはじめ、学生ボランティアや、中国人の留学生、そして元ホームレスの人など。
学生ボランティアの中には茨城や横浜、千葉などの遠方から来ている人もいました。

また、「中学生の時から七年間炊き出しを手伝っている」という女性もいてびっくり。

挨拶が終わると調理作業を開始。
今日のメニューはカレー。カレーは食品輸入会社「シャルマーホールディングス」が提供してくれるため、
今回はごはん炊きと、野菜の塩もみ作りを行うことになりました。

わたしが担当したのは米とぎの作業。
大きな釜に8Lのお米を投入すると、大量の水でお米をといでいきます。
お釜に手を入れると、水がメチャクチャ冷たい……!

手の感覚がなくなるのを感じながら、お米をといでいきます。
この作業を9回やり、合計72Lのお米を準備しました。

調理を行う施設は、使われなくなった小屋を使用しており、
暖房器具が一切ありません。そのため、ほとんど凍えながらの作業となりました。

あなたはなぜ、炊き出しを手伝うの?

作業中はKさんという主婦からお話を聞いてみました。
彼女は仕事を定年退職して時間があり、
3年間ほど炊き出しのボランティアをやっているとのこと。
炊き出しに参加したきっかけは、父が逝去し、その衣類を路上生活者に提供したこと。
そこから少しずつ、調理や配食にも参加するようになったのだそうです。

彼女は
「仕事を退職したわたしにできることって、限界があると思うの。
それでも、誰かのために時間を使いたいって思って、
それで炊き出しのボランティアに参加しているのよ」
と、言いました。

まるで当たり前のように、「誰かのために時間を使いたい」
と語るKさん。わたしには彼女が聖人に見えました。

米とぎが終わると、野菜を切る作業に参加。
きゅうりを10本ほど切りました。

 

ボランティアの人達と卓を囲む。まかない休憩

作業が一段落すると、まかない休憩です。
焼きそばとご飯、それにカレーが振る舞われました。

大鍋に作られた料理を、多人数で食べるワイワイ感。
これこそまかないの醍醐味だよなぁとしみじみします。

作業場は暖房がなくて寒かったため、温かい食事がありがたい!
震える手でスープを飲むと、熱が全身に伝わっていくのを感じました。

「前は屋外でテント張って調理していたからね。今はまだ暖かい方よ」
と、主婦のKさん。
知らなかった。炊き出しって、かなり体を張って行うボランティアなんですね……

食事が一段落したところで、炊き出しの責任者「清野」氏に、炊き出しに関する質問をしてみました。

Q.路上生活者の人たちは、炊き出しの情報をどうやって見つけるんですか?
A.他の路上生活者から教わったり、「路上生活脱出ガイド」というパンフレットに炊き出しの情報が載っている。
また、現在ではネットカフェで暮らす「ネカフェ難民」もおり、彼らはネットで情報を得られる

Q.炊き出しの開催は2週間に1回ですが、他の日は路上生活者は何を食べるんですか?
A.他の団体や教会による炊き出しがあるため、週に6日ぐらいは常に炊き出しが行われている
とのこと。

ホームレスの実態について学ぶ

食事が終わると、TENOHASHIの活動内容に関するレクチャーを受けました。
レクチャーを通じて、

  • ホームレスの多くが中卒で、知的障害がある人などが多い。彼らは適切なケアが受けられず、社会から追いやられてしまう
  • ホームレスを保護する施設は、ただタコ部屋に放り込むだけ。
    そこでイジメや嫌がらせが多発するため、また路上生活に戻ってしまう

といったことを学びました。

2020年に「ケーキの切れない非行少年たち」という本が話題になりました。
その本でも「知能指数が低い子どもたちが適切なケアを受けられず、ドロップアウトして非行に走ってしまう」
といったことが書かれていました。

ホームレス問題も非行問題も、子供の頃の教育が重要なのではないか?
知能に問題がある子を、学校や支援施設でしっかりケアできれば、ホームレスも非行も減るのではないか?と感じさせられました。

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東池袋中央公園で配食をお手伝い

午後3時30分、配食のボランティアに参加するため、東池袋へ向かいます。
場所を聞いてびっくりしました。配食が行われるのは、サンシャインシティの隣にある東池袋中央公園だったのです。


サンシャインシティは自分もよく行くのですが、あの華やいだ世界のとなりでホームレスの炊き出しが行われるという、

その落差がすごいなと感じました。

炊き出しの前に、まずは衣類の配布を行いました。
ホームレスの人たちに、ボランティアで提供された衣服を渡していきます。(1人1着まで)

この時点で大行列ができており、衣類は次々となくなっていきました。

特に、ジャケットやジャンパーなど、寒さをしのげるものが人気なようでした。

ホームレスの人たちを見て思ったのは、昔のように「いかにもホームレス」
という見た目をした人がそんなに多くない、ということ。

髪を切り、きちんとヒゲを剃っている人など、一見すると路上生活者とは思えないほどです。

いわゆる「ネカフェ難民」なのでしょうか、見た目が30代くらいの人もいました。

続いて配食のボランティア。
ご飯をよそっては渡し、よそっては渡しを繰り返していくうちに、
朝、あれほど炊いたお米がみるみるうちになくなっていきます。

配食が終わると食事休憩。
配食で配られたカレーをいただいたのですが、独特のスパイスが効いていてうまい!
一緒に出されたチャイも、スパイスが入った不思議な味。

配食中は3時間ほど屋外に出ており、凍えるほど寒かったため、
温かいカレーは涙が出るほどありがたかったです。

最後はあと片付け。公園を使用前と同じ状態になるよう、キレイに清掃します。
タバコの吸殻が落ちていたので拾ってみると、タバコはフィルターまで吸いつくされていました。
そんな「フィルターまで吸われたタバコ」がいくつも落ちており、路上生活者の困窮した感じが伝わってきました。

後片付けが終わる頃には、200人近くいたホームレスの人達は、一人残らず消えていました。
あんなにたくさんいたのに、まるで煙のように消えてしまう。
彼らは寒空の下、どこへ行ったのでしょう。

炊き出しボランティアを終えて

正直、体力的にかなりハードなボランティアでした。
朝11時に集合し、解散したのは午後7時30分。疲れた……

朝は暖房のない厨房でひたすら調理をし、夜は屋外で配食作業を行ったため、
1日中寒い思いをして過ごすことになりました。

でも、そうやって過ごすことで、かえって路上生活者の気持ちをほんの少しだけ理解できたような気がします。
暖かい部屋で寝泊まりできるということが、どれだけありがたいことか。

また、炊き出しのボランティアを長年やっている人と話せたのも心に残る体験でした。
「仕事を定年退職したあとでも、誰かのために時間を使いたい」
と語ったKさん。

炊き出しのボランティアに参加するまで、
「ボランティアをする人って、良い人ぶりたいんじゃないの?」
「どうして、わざわざ他人の手助けをしなきゃいけないの?」
という気持ちがありました。

でも、彼女たちはボランティアをすることに、なんの気負いも感じていません。
まるで当然のように、人のためになる活動をしている。
彼女たちのような人に出会えたことが、今日一番の収穫でした。

特定非営利活動法人 TENOHASIについて

公式HP
http://tenohasi.org/

募集しているボランティアについて
TENOHASHIでは調理・配食の他に、路上生活者の人とコミュニケーションを取る「お茶会」や、

路上生活者の人たちに声掛けを行う「夜回り」などのボランティアを募集しています。

募集ボランティア一覧(調理・配食・お茶会・夜回りなど)

http://tenohasi.org/volunteer/information/

炊き出しの開催日は?
炊き出しは毎月第二・第四土曜日に開催されます。

炊き出しのボランティアに参加するには?
炊き出しのボランティアに参加するには、事前申し込みが必要な場合があります。

調理作業の場合

調理作業のボランティアに参加する人は、HPの「お問い合わせフォーム」に氏名と参加希望日を記入の上、
お申込みください。調理作業が行われる場所の住所を教えてもらえます。

申し込みフォーム
http://tenohasi.org/inquiry/

配食作業の場合
配食のボランティアに事前申し込みは不要です。
当日、現地集合し、係員にボランティアに参加したい旨を伝えましょう。

必要なもちものは?
特にありません。動きやすい格好で参加しましょう。
冬の日の参加はとても寒いので、十分に暖かい格好で参加してください。

また、髪の長い方はヘアゴムなどの持参をおすすめします。

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