親子の鹿と遭遇
ガイドさんが何かの花の説明をしていた時のこと。
何気なく正面を見ると、10メートルほど先に、鹿の親子がいるのを発見しましたた。
それはまるで、『スタンド・バイ・ミー』のワンシーンのよう。
興奮のあまりわたそは前を指さすと、
「鹿だ! あそこに鹿がいる!」と、大声で言いました。
子鹿の体には、白い点々の模様がついていて、
これは木漏れ日に擬態する効果があるとのこと。
木漏れ日に変装するなんて、ロマンチックな生き物だと思いました。
お母さん鹿は人間慣れしているのかほとんどこちらに注意を払わず、草を食べながら去って行きました。
三湖から二湖へ
午前11時、三湖に到着。
道中では、またも鹿の親子を発見。
お母さん鹿が、子鹿をペロペロと舐めて毛づくろいをしており、
あまりに激しく舐めるので、子鹿はちょっと辟易しているように見えました。
午前11時半。二湖に到着。
歩道の上に大きなフンが落ちており、それはヒグマのものだそう。
かなり新しいものなので、つい最近ヒグマがここを通ったのではないか、とのことでした。
その後もやたらと動物のフンを見かけたので、なぜでしょうかとガイドさんに聞いて見と、
「きっと動物たちも、整備された道の方が歩きやすいからでしょうね」という答えが返ってきました。
一湖にゴール
午前11時50分。ゴールの一湖に到着。
一湖には、開拓民によって持ち込まれたというフナが泳いでいました。
一湖の先は広大な草原でした。
森を抜けた開放感と、ゴールできた達成感で、叫びたいほど清々しい気持ちでした。
「ここでヒグマが出たら、やっぱり引き返さないといけないんですか?」
ガイドさんに冗談半分で聞いてみると、
「そうですね。以前、ゴール手前でヒグマに遭遇してしまったグループがいましたよ」という答えが。
ふと、草原の右手に、黒くてずんぐりとした生き物が座っているのを発見。
ガイドさんは「見てください、あそこにクマがいますよ」と、いたずらっぽい口調で言うと、その物体を指さした。
よく見るとそれはヒグマではなく、ただの岩でした。
遠くから見るとヒグマが足を広げて座っているように見えるため、心臓によくない景色です。
遊歩道では左手に知床連山、右手にはオホーツク海が広がる、雄大な景色を満喫。
ここで、3組目の鹿の親子を発見。
自分が今までに見てきた鹿はすべて角のない雌鹿でした。雄の鹿はどこでなにをしているのだろう?
遊歩道を抜けると、知床五湖フィールドハウスへと戻ってきました。
売店で鹿肉コロッケを購入。
さっきまでかわいいかわいいと言っていた鹿の肉を食べるなんて、どうかしています。
味は普通のコロッケとの違いまではわからないけれど、おいしかったです。
「知床センター」にガイドさんに送ってもらうと、お昼を食べに近くの定食屋へ。
よほどお昼時が忙しかったのか、店内は混沌たる有り様。
すべてのテーブルが散らかっていて、お客さんが食べ終えた皿が置かれたままになっていました。
しばらく待って席を用意してもらうと、「知床海鮮麺」と「サザエのつぼ焼き」を注文。
しばらくして料理が運ばれて来ました。
ツボ焼きは塩に火がついていて、中まで火が通ったところを食べます。
サザエは臭みがなく、身がやわらかくてとろとろでした。
海鮮麺はごく普通のタンメンという感じ。
午後2時。時間に余裕を持って発車の30分前にバスターミナルへ。
ターミナルのそばからは小さな丘が見えました。丘へ続く坂は螺旋状に続いていて、上の景色はわかりません。
「すみません、あの坂の上には何があるんですか?」
ターミナル受付の女性に聞くと、
「坂の上には、中学校がありますよ」とのこと。
中学校。坂を上り切った瞬間グラウンドや校舎が、目の前にパッと広がるのでしょうか。
しかし帰りのバスはすでに到着していたため、景色を確かめることはできませんでした。
今の時代なら、丘の上の光景がどんなものなのか、少し調べれば簡単にわかるでしょう。
でも、あえてわからないままにしておくことにしました。
バスが発車すると、知床斜里駅へと出発します。
バスガイドを聞きながら知床斜里へ
知床斜里へ戻るバスには7人の乗客しかいませんでした。
どの乗客も、疲れきった顔で座席にもたれかかっています。
わたしも3時間ほど歩いて疲れていたので、窓ぎわに寄りかかって眠ることに。
バスが発車してしばらくすると、行きにはなかったバスガイドが始まりました。
「みなさま、お疲れのこととは思いますが、どうかガイドにお付き合いしてもらいたく思います」
ガイドさんはよく通る声をした30~40代の女性でした。
無視して寝るのも忍びないので、薄目を開けた状態で話を聞くことに。
ガイドさんは江戸時代、知床に入植した津軽藩士たちの悲惨な運命(100人が入植して、その内の70人以上が一年を持たずに亡くなった)や、
知床で生まれた恋歌などを、声に抑揚をつけながら次々と披露していきました。
ガイドが予想外に面白いため、乗客たちは少しずつ目を覚ましていきます。
「天国へと続く道」を通過
バスは「天国へと続く道」という、全長18キロの直線道路を通過。
まるで空へと続く滑走路のようで、全力で走ったら本当に天国へ行けそうでした。
遠くから見ると感動するけれど、いざその道に入ってしまうと、何の変哲もない道路にしか感じられませんでした。
背後を振り返ると、他のバスが停車して「天国への道」の入り口を眺めているところでした。
自分は今絶景の一部に組み込まれているのだと思うと、不思議な気持ちになりました。
バスは終点の知床斜里に到着。ガイドさんが締めのあいさつをした時、車内は大きな拍手に包まれました。
バスを下りる際にガイドさんが見送りをしてくれたのですが、
ガイドさんと硬く握手をしながら感謝の言葉を述べる乗客がいました。それほど彼女のガイドは印象に残るものだったのです。
空にはわたあめのような雲がぽっかりと浮かんでいます。
だんだん夏らしい天気が続くようになったことを、とても嬉しく思いました。
知床斜里から網走へ
網走行きの電車に乗車し、午後4時20分、網走駅に到着。
網走に到着するまで、
「網走刑務所っていう大きな刑務所があるぐらいだから、きっと内陸なんだろうな」
というイメージがあったのですが、実際は海沿いの町でした。
ホテルで休憩した跡、オホーツク海を見に行くことに。
ようやくたどり着いた先は、広大な堤防でした。
元来た道を戻ると、ミスタードーナツに寄り道。
店内には小学生ぐらいの姉妹がいて、ドーナツを1つずつ買って店を出ていきました。
たった1つのドーナツを大事そうに持って帰る様子が、なんだかいじらしかったです。
店を出ると、古い駄菓子屋の中で、ちょっと太りすぎた女の子がお菓子を買っている光景や、
交番でドライバーが道を尋ねる光景、3人の男の子たちが並んで歩いている光景など、何気ない景色を目にしました。
どれもあまりにもさりげない光景だったけれど、妙に心に残る何かがありました。
夕食はケンタッキー。同じ建物内にピザハットが同居しているという変わった店でした。
明日は旅の目的の一つである、乗馬を体験する予定です。
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